シャブリの赤を頼まれた時、どう答える?【サービスマンの機転力】

料理と飲食業
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今回はサービスのお話。

自分はずっと料理人をやっていたんですが、あるフレンチで3年間サービスとして過ごした時期があります。

そのお店、自分が今まで働いたレストランで1番値段と評価が高いところでした。

レストランで働いている方なら、もしかしたら店名をご存知かもしれません。

そんな高級店に、当時フリーターだった自分がよく入れたもんだなと今は思います。

面接でのやり取りで

「今は料理人募集してない。サービスなら募集してる。」

「では、サービスとしてお願いします。この店で働きたいんです。」

そんな感じで、私のサービスマンとしてのキャリアはスタートしました。

サービスは高校のバイト以来なので、つまりは素人ですね。

最初の頃は当然、裏方の業務でお客様に接する機会はありません。

ですが、幸運にもしばらくするとダイニングに立って、お客様の目の前でサービスできるポジションとなりました。

自分よりよっぽど格の高い方々へのサービスは、緊張感とやりがいに満ちていました。

本当に恵まれていたなぁと思います。

そんな経験を経たので、現在はイタリアンのサービスマンとして働いていられています。

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シャブリの赤を頼まれた時、どう答える?

さて

今からするお話は、自分がそんなサービスを経験する前のこと

スペイン料理屋でキッチンをしてた時のお話です。

ある休日、私はサービスマンの先輩2人と食事をしてました。

そして1人の先輩が、もう一人の先輩にクイズを出したのです。

ある高級フレンチレストラン、男女2名で食事してる席があります。

女性はこういったレストランでの食事の経験はあまり無いようで、料理、サービス、お店の雰囲気などあらゆるものに驚きのリアクションをしてくれ、連れてきた男性はとても得意げ。

そしてその男性は、サービスをしている自分に向かって自信満々にこう言いました。

「シャブリの赤をちょうだい!」

さぁどう答える?

『シャブリに赤はございません』では0点

このクイズの意味はわかりますか?

シャブリはフランスのブルゴーニュにある地区の名前です。

シャブリ地区は白ワインが有名で、牡蠣とシャブリというのは鉄板の組み合わせ。

で、ここがこのクイズの肝の部分なのですが…

このシャブリ地区、赤ワインは作ってません。

つまり、この世には存在しない物を頼まれたらどうする?というクイズです。

クイズを出された側の先輩は

「え?『シャブリに赤はございません』ですか?」と。

その答えに対して、出した側の先輩は呆れ顔。

しばらくしてから、このクイズの解説をしてくれました。

その答えは0点だ

いいか?

ここで馬鹿正直に「シャブリに赤はございません」なんて言ってみろ。

その男性に恥をかかせ、自尊心を深く傷つけることになる。

男性はカチンと来るかもしれないし、恥ずかしくて黙ってしまうかもしれない。

女性は男性に気を遣うかもしれないし、引いてしまうかもしれない。

どちらにせよ、さっきまでの楽しい雰囲気をぶち壊す可能性があるってことだ。

それは他のテーブルにも伝わって、ダイニング全体の空気が変わってしまう。

ここで大事なのはいかに自尊心を傷つけずに断るかなんだ。

そう

シャブリの赤は存在しませんが、その事実をそのまま伝えてしまうのはデメリットしかない。

それは、人によっては高圧的にとられてしまうかもしれない。

正確な事実を伝えるなら、機械の方が優秀でしょう。

ですが、ここで機転を利かせられるのが、人間のサービスマンの意義なんです。

それを聞いて、考えてから自分は答えました。

「申し訳ございません。あいにく当店ではシャブリの赤の取り扱いがございません。」と。

ポイントとしては「存在しているけどウチにはない感」を醸し出してること。

そして全く嘘は言っていないこと。

男性はのちに自分で調べた時、シャブリの赤がないことに気づけば良いんです。

今、それを突きつける必要はこの場合ありません。

この答えにに対して「次第点」と先輩。

さらに

「自分ならそこに『もし、ブルゴーニュの赤がお好きでしたら、こちらでおすすめのものを提案させていただきますが、いかがでしょう?』っていうのを足すね。」

なるほどなぁと思いました。

だって、多分その男性はブルゴーニュの赤が欲しかったんだろうなと想像できるから

フォローも完璧です。

咄嗟にコレが出せるかどうか

いかがでしょう?

あなたはどんな答えを出しましたか?

もしかしたら

「ちょっと考えればわかるよ」って方、いるかもしれません。

でも、「ちょっと考える時間」もない場面で、とっさにこの切り返しができるかどうか

そう考えると難しいですよね。

自分もしばらく考えてから、0点の答えが出てからやっと次第点の答えを出しました。

人を相手にしている限り、サービスマンに完全な答えはありません。

誰かに喜ばれた行動は、誰かにとっては不快に感じるかもしれない。

このお客様は、何をしたら喜んでもらえるか?

サービスはお客様の喜びにむかって、慎重に綱を渡っていくのです。

だからこそ、お客様に喜んでいただけた時は、サービスもまた深い喜びを感じる事ができる。

サービスの世界も面白いですよ。

ではまた。

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