【1番うまくて1番まずいもの】最も基本的な調味料「塩」について解説

料理と飲食業
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前回の投稿では「味とは何か?」というテーマだったんですが

その中で味には 

塩味 甘味 酸味 苦味 うま味の5種類あるよ、というのを紹介させていただきました。

今回はその中から

塩味,延いては塩について解説します。

料理において最も基本的な調味料である「塩」

当たり前のように、幅広く使われている「塩」

その特徴や効果を知っておくことは、料理のスキルを上げるのに大変重要なものになっています。

今回は

  1. 塩分の体内における機能
  2. 味以外での、料理における塩の効果
  3. 実際に料理で塩を使う時のポイント

と3つの項目に分けてお話しさせていただきます。

タイトルにある「一番うまくて一番まずいもの」というフレーズは、徳川家康の時代のものです

料理を生かすも殺すも塩次第、ということです。

ぜひ、知識を深めていただけたらと思いますので、よろしくお願いします。

塩分の体内における機能

前回、塩味は体内のミネラルバランスを保つ為に人体にとって好ましいと判断されるとお話ししました。

それがどのように機能するかをまずはざっくり、3つお話しします。

細胞を正常に保つ

人間のあらゆる体液には塩分が溶けています。そして細胞の内と外との体液の圧力を調節しています。

バランスが崩れると食べ物から栄養を吸収することができなくなります。

脳の指令を体に伝える

脳が指令を出すことで私たちの体は動いてますが、ここで必要なのが塩の成分、ナトリウムイオンです。

脳は電気信号を使って命令を飛ばします。これを筋肉細胞、神経細胞に伝えるのがナトリウムイオンの仕事。

各神経に命令を伝える体の電線といった感じです。

ちなみに、足が「つる」現象もこれによって説明ができます

運動でミネラルを含んだ汗を流しすぎ、脱水症状になると

筋肉を安定させてねって命令を伝えていた電線が途中で途絶えます

これによって筋肉が「つる」ということが起こるんです。

暑い季節はご注意ください。

運動で汗をかくと、ミネラルが失われる

食欲と味覚の正常化

適切な塩味は料理の美味しさを引き出し、塩味の刺激によって正常な味覚が保たれます。

多くても問題なのですが、全く無いとなると味覚が鈍り、食欲も落ちて体力がなくなる。

そうしてさらに食欲が落ちるという、悪循環に陥ります。

何事もほどほどがちょうどいいですね。

以上が、塩分の機能になります。

料理における塩の効果【浸透圧】【タンパク質の変性】

塩味に関する素材は一つしかありません。

皆さんご存知のお塩です。

料理における基礎中の基礎であり、 一番重要な要素と言って過言ではありません。

海水から不純物や水分を除いて結晶化させたものが私たちが振ってる食塩になるわけなんですが

味わいとして以外にも、多彩な効果を食材にもたらしていきます。

これからその効能を解説するにあたって、覚えていただきたいワードが2つございます。

それが【浸透圧】【タンパク質の変性】

これから挙げていく、塩がもたらす効果。

その多くが2つのワードどちらかが関わっていきます。

浸透圧

これは動植物の細胞で起こる現象です。

細胞には水を通して、他の物質は通さない膜があります。

その膜を境に片方には物質濃度の濃い液体、もう一方には濃度の薄い液体があった場合

濃度を均一に保とうと、濃度の濃い液体へ、濃度の薄い液体の水分が移っていきます

これが浸透圧

濃度が濃い液体に向かって薄い液体から水分が移動するということです。

タンパク質の変性

いろんな種類があるタンパク質なんですけど温度、pH値、圧力によって状態が変わります。

これがタンパク質の変性です。

その中の1つとして塩分によって変化するタンパク質もあります。

それによって、料理中に様々な効果が出てくるのです。

塩のさまざまな効果

以上を踏まえた上で、ざっと塩の効果を挙げていきますと

  • 脱水効果
  • 保水効果
  • ヌメリの除去
  • グルテン生成の手助け
  • 殺菌
  • 発酵環境を整える

このような感じになっています。

それぞれざっくり解説していきましょう!

脱水効果

食材の表面に塩を振ったり、塩水につけたりすることで

食材の外側が塩分が溶けた濃い液体になり、膜を挟んで内側の水分が外に移動していく。

先ほどの浸透圧が関係していますね。

野菜をしんなりさせたり、焼く前の魚に塩を振っておくことで魚の臭みを水分と一緒に外に出すのがこれです。

生ハムも塩漬けの段階がある

保水効果

一見すると脱水効果と矛盾してますが…。

お肉や魚に振った塩、まずは浸透圧によって脱水効果を起こします。

すると、水分が移動した後の細胞は水分以外の物質も移動するようになります。

これによって塩が中に入っていって、あるタンパク質が塩によって溶けます。

がちがちに骨格を保っていたタンパク質が、粘度と保水性を持つようになるということです。

タンパク質の変性が関わってますね。

ヌメリの除去

生ダコやウナギにはヌメリがあります。このヌメリもタンパク質なんです。

そこに塩を加えることによって、ヌメリが凝固します。タンパク質の変性によるものです。

さらに塩のザラザラが、洗顔料のスクラブのような働きをして、ヌメリを剥がしてくれます。

グルテン生成の手助け

グルテンはご存知ですか?

うどんやパンをモチモチさせてる成分です。

グルテンは、小麦粉にある2つのタンパク質が結びつくことによってできるのですが

塩がこの2つのタンパク質がくっつくのを助けます。

タンパク質の変性ですね。

殺菌

保水効果のとこで、いくつかのタンパク質は塩によって溶けるとお話しました。

それによって、細胞の構造は壊れます。

そうすると細菌は育つことができなくなるため、死滅します。

ただ、細菌によって耐えられる塩の量などは異なってきますので、ご注意ください。

発酵環境を整える

殺菌に続き、菌に関することですね。

菌、つまり微生物は、生きていくために栄養、適温、そして水分が必要です。

そして、食品中の水分というのは、全部が自由に利用できるわけではありません。

水分子が他のタンパク質や、炭水化物といった栄養などとくっつくと、微生物はその水分子とはくっつけなくなってしまう。

発酵というのも、微生物の活動で変わりないんですが…。

この発酵に関する微生物は、すでに塩分とペアになってる水分と、くっつくことができます。

発酵の微生物に関しては優しい環境ができていて、細菌の微生物には厳しい環境が出来上がる、と。

物事がうまくできていますね。

発酵食品のザワークラフト

実際に料理で塩を使う時のポイント

最後に実践編です。

実際に、料理で塩を使う際のポイントを3つお話しします。

それが

  • タイミング
  • 種類の使い分け

です。それぞれ解説していきます。

塩の量

まず量のお話

人間の体液の分濃度は0.9パーセントくらいで、それに近い1パーセント前後が基準になります。

それより0.6〜0.8パーセントは薄味とされて、お吸い物とかはこれくらいがちょうどいいかもしれません。

また、1.5〜3パーセントは濃いめで、麺と絡めて食べるラーメンのスープ、漬物がこの濃度に当たります。

とはいえ、私たち料理人は塩を振る時は、そのほとんどを計ることはせず、感覚でやっています。

それは、経験を重ねることで、どれくらいの塩味になるかおおよその予測がつくからです。

いちいち測っていたら、仕事が間に合いません(笑)

皆様も、塩を振る量の感覚が掴めれば、料理上手にぐっと近づくことができます。

お肉焼く時の塩だったり、パスタ茹でる時の塩の量を1パーセント前後で測ってみて、その後自分の好みで少し足したり、減らしたりしていけば塩加減の感覚は掴めてくると思いますよ。

塩を使うタイミング

塩を振るタイミングでも、それぞれに最適なタイミングがあります。

サラダなど、生野菜の食感を大事にしたい料理の場合は、味付けは食べる直前にしましょう。

時間が経てば、どんどん野菜がしんなりしてきてしまいます。

お肉や、臭みがない魚は焼く直前で塩を振りましょう。

塩を振ることで水分と一緒に臭みが出ていくんですが、あまり時間が経つと、旨味も逃げていく場合もあります。

直前で振る場合は、中まで塩味が浸透する時間がないので、塩の量を増やしたり、あとでつける塩やタレを用意しておくといいかもしれません。

調理においては、塩を加えてからの時間が長いと他の成分と馴染んで、最初に比べて塩味が丸くまろやかになってきます。

まろやかになるというのは、一体感が出るともなりますが、逆を言えば味がぼやける、単調になるということでもあります。

直前に入れる塩の場合もしかり。

「味にメリハリがある」と「味に一体感がない」というのは表裏一体なので、タイミングは併用するなりして、うまくお互いのメリットを引き出してください。

肉は焼く直前に塩を振ります

塩の種類の使い分け

お肉にふりかけるものや、液体に溶かすなど、形が残らないものは普通の塩で構いません。

その中でも個人的なオススメはサラサラした焼き塩です。

塩同士くっついて塊になってることがないので、ふりかける際、均一に思い通りまぶすことができます。

そしてステーキを焼いた後など、仕上げに使う塩には、フルールドセルやフレークソルトなど、ちょっといい塩を使ってみてはいかがでしょうか?

ステーキは仕上げに塩を振る場合が多い

「フルールドセル」直訳すると「塩の花」

海水を自然乾燥させて、水面に浮かんでくる塩の結晶をすくったものです。

フランスのゲランド塩が有名ですね。

自然のまま作るので、塩化ナトリウム以外にもマグネシウム、カリウムなどのミネラルを含んでいて、味にも深みがあります。

フレークソルトは薄い板状のピラミッドのような形をした大粒の塩です。

両者とも結晶が大きく、味以外にもサクサクとした食感のアクセントになります。

是非使ってみてください。

おわりに

コースの料理と家庭料理では、塩の量の考え方がまた違ってきます。

それでも、タイミングなど基本的なところは共通しています。

プロでも完璧にするのは難しい、塩の使いかた。

味の基本中の基本である塩。

ぜひ感覚で扱えるようになって、立派な料理上手になっていただければと思います。

ではでは。

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